2007/11/07

Fw 社内のPC700台からMS Officeを削除したアシスト「OpenOffice.org移行の障害はこう解決」

社内のPC700台からMS Officeを削除したアシスト「OpenOffice.org移行の障害はこう解決」

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アシストの社内
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OpenOffice.orgの利用
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OpenOffice.org Impressでプレゼンテーション資料を作成しているところ。Webブラウザは社内のOpenOffice.orgのノウハウ掲載サイト「かもめ塾」
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オープンソース事業推進室長 神谷昌直氏
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社内SNSもオープンソースのOpenPNEを利用して構築した。現在約500名が登録している
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 「Microsoft OfficeからOpenOffice.orgへの移行にあたって問題になったのは,社外とのデータ交換,既存業務との連携,マクロ」---アシストは同 社内の標準オフィス・ソフトをMicrosoft Officeから,オープンソースのOpenOffice.orgへ全面移行した(関連記事)。通常業務用パソコン約700台からは,Microsoft Officeをアンインストールし完全に削除したという。

 アシスト サービス事業部 eラーニング担当課長 池田秀和氏は顧客へのプレゼンテーションをOpenOffice.orgのImpressで作成した。「慣れればOpenOffice.orgに使いにく さは感じない。社内のOpenOffice.org情報サイト『かもめ塾』にいい素材があるので,プレゼンテーション資料の制作はかえって楽なくらい」と 話す。

 だが,OpenOffice.orgへの移行にあたっては冒頭で挙げたような障害もあった。アシストはこれらの問題をどう解決したのか。

「ユーザーを支援できるよう率先して使う」

 アシストがOpenOffice.orgへ移行したきっかけは,オープンソース・ソフトウエアの事業化を目的とした調査だった。「オープンソース は必須となる時代となり,お客様のIT化を支援するために我々もオープンソースを理解し使いこなさなければならない」(オープンソース事業推進室長 神谷昌直氏)。

 その中で,アシストは「使用料を払う必要のない」(代表取締役社長 ビル・トッテン氏)OpenOffice.orgへの移行を行う方針を決める。「利益を独占するための知的所有権の行使には以前から私は反対だった。そし て世の中が大きく変化し,従来一つの企業または個人が独占的に所有してきた知的財産そのものが公開され,共有化されることによりその価値が薄れていく。ソ フトウェアの世界においてもそれがオープンソースという形態で将来起きうる」(トッテン氏)とする,同氏の決断だった。

 OpenOffice.orgへの移行は,2段階で実施した。第一段階は2006年10月,テスト的に東京の営業部門に導入した。

 ここで判明したのが,3つの課題だった。

第一段階の導入で浮かんだ3つの課題

 ひとつは,社外とのデータ交換の問題。レイアウトの崩れなどの発生である。

 2つめは,既存業務との連携。アシストでは販売管理や顧客管理システムでMicrosoft Accessをクライアントとし,ダウンロードしたデータをAccessからExcelを呼び出しオープンしていた。

 3つめは,マクロである。アシストでは経理業務などでExcelマクロを利用していたがOpenOffice.orgではそのまま動作しない。

最初の課題である「社外とのデータ交換」については,PDFファイルで提出できるものはPDFファイルとして提出する,Microsoft Office Viewerでレイアウトを確認するという対策を採った。OpenOffice.orgは,標準でPDFファイルを作成する機能を備えている。 Microsoft Office Viewerは,マイクロソフトが無料で配布している,Word,Excel,PowerPointファイルを閲覧できるソフトウエアである。

 2つめの既存業務との連携については,Microsoft Access本体ではなく,無償のAccessランタイム版を使用することとした。Excelに代えて,OpenOffice.orgのCalcでデータ を開くようにしたところ,一部で文字化けが起きたが,Accessからデータをエキスポートするファイル形式を「Excel95-97形式」から 「Excel97-2003形式」に変え,OpenOffice.orgを2.01から2.04にバージョンアップすることで文字化けは発生しなくなっ た。

 マクロについては,2007年4月中をメドに移植する予定である。経理業務で使用しており,変換が必要なマクロは68本だった。

Vista発売の翌日にMS Officeを削除

 課題の解決にメドがついたことから,全社員のパソコンにOpenOffice.orgを導入した。そして「奇しくもマイクロソフトが新しいOSと 銘打って大々的にWindows Vistaを発売した2007年1月30日の翌日に,全社員のPCからMicrosoft Officeを削除させた」(トッテン氏)。

 Microsoft Officeを削除したパソコンの台数は,約700台。アシスト社内には約1100台のパソコンがあり,うち約300台は製品サポート用,約100台は営 業・販売支援・共通業務用で,上記以外の約700台をMicrosoft Officeから,OpenOffice.orgへ移行した。

 移行にあたっては,社内からの問い合わせ回答などのため,サポート担当者を配置した。現在約4名。サポートセンター オープンオフィスサポート部の上原弘氏は「移行当初,ピーク時は1日十数件の問い合わせが寄せられることもあったが,社員が習熟してきたり,イントラネッ ト上のWikiでQ&Aなどを掲載したりしたことから問い合わせも減り,現在は1日数件に落ち着いてきた」と話す。

 アシストでは,Microsoft Officeのライセンスを3年契約で購入しており,現在契約中のライセンスは約2年後に切れる。さらに集約を行い、その際にライセンスを更新する必要が なければ「全社で3年間で約1700万円のライセンス料が不要になる」(オープンソース事業推進室長 神谷氏)という。

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